HOME > 概要 > 拠点リーダーからの挨拶

拠点リーダーからの挨拶

~拠点形成の目的~
watanabe.jpg
慶應義塾大学大学院社会学研究科教授
論理と感性の先端的教育研究拠点・拠点リーダー
渡辺 茂

 本拠点では「論理と感性」の先端的教育研究を、海外の有力な教育研究機関と連携して世界最高水準で行うための拠点を形成します。21世紀COE「心の解明に向けての統合的方法論構築」では、人文科学の問題を実験科学の技法で解析し、そのデータを人文科学から再解釈することの繰り返しにより、研究がスパイラル状に発展することが、美的判断の実験心理学・脳科学研究や、論理の比較認知科学研究で明らかになりました。また、これらの統合的研究に参加することにより若手研究者の研究遂行能力を飛躍的に伸ばすことができました。これらの成果をさらに国際レベルで発展させるため、グローバルCOEでは、21世紀COE での中間評価が高く、統合的方法が効果的に機能した分野の課題として「論理と感性」に特化した先端的教育研究を行います。ヒトの判断には論理的アルゴリズムによる判断と感性による直感的判断がありますが、両者の関係は認識論の古くからの課題です。近年の認知科学、神経科学の発展は、判断における論理と感性が独立した過程ではなく、ひとつの系として、ある時は相互補完的に、ある時は対立的に働いていることを示しつつあります。論理や感性のプロセスは必ずしも意識化できる過程ではなく、脳科学的アプローチが必須であり、言語や文化による制約も大きいものです。本グローバルCOE拠点では、判断における論理と感性の統合を、最も基礎にある生物学的レベルから文化レベルまで、総合的に理解しようとしています。具体的には、

  1. 論理は系統発生的にどのように発生したのか、
  2. 脳内機構としては論理と感性はどのような系を構成しているか、
  3. その遺伝と発達的変化はなにか、
  4. 論理・情報学的には論理と感性の相互作用はどのように表現できるか、
  5. どのような文化的制約があるのか、

という5点を明らかにしたいと考えています。そして、その研究に参加することを通じて実験科学的技法をもった人文研究者、人文科学的な知性を身につけた実験研究者を育成し、国際社会へ送り出すことも目的としています。心の問題は現代社会におけるもっとも緊急に解決しなければならない課題のひとつであり、本拠点はそのような問題の中でも特に重要な論理と感性の協調と対立の解明に対応できる深い知識、幅広い視野、国際レベルの先端的技術を併せ持った研究者を育成することを目指します。